
情報とは、損得のことです。
だから、情報提供時に出し惜しみすると、あまりよい結果にはならない。
ある情報の提供時やイベント勧誘時に、お客様にこのようなお願いをしていませんか?
「ギフト券を差し上げます…」
「会員登録してください…」
「メールとお名前を入力してください…」
こういうことは、よく考えてから実践した方がよいでしょう。
なぜならば、顧客への情報提供に、企業側の損得を考えた戦略だからです。
損得勘定がバレバレの企業に、顧客がネギを背負ってやってくると思いますか?
もうその時代は終わってます。
こういうやり方している会社は、相当苦労しているはずです。
ネットは、公平な社会を作り上げてしまいました。
どこかで無料で提供される情報を、出し惜しみしたり、顧客情報を取得する手段に利用したりするのはご法度です。
顧客に、起業のあり方を見透かされてしまいます。
「集客」とは、顧客にはまったく価値がない。
それに会社側が気づけたら、苦労は減るでしょう。
「集客」って悩ましいですよね。
経営の柱ですから…。
会社にとって最も重要な仕事が、顧客を集める「集客」です。
ところが、お客様側からすると、「集客」にまったく価値はありません。
多くの顧客は、「集客」という言葉を知らないかもしれません。
それどころか、会社側の集客行為や営業行為に、嫌悪感さえ抱いています。
顧客は、「集客」されること、求めていない営業行為をされることは、まったく望んでいません。
だから、集客行為、営業行為がお客様に気づかれると、彼らは引いてしまうのです。
顧客が求める二つの価値とは
顧客が求める価値は二つです。
一つ目は、「正しい情報」です。
私の行きつけのパン屋さん。
そこの食パンは、食べ残すと3日目にはカビが生えます。
それは、「このパンには防腐剤が入っていない」という“情報提供”です。
それは、とても誠実なパン屋さんであることを私に教えてくれました。
パン好きな私は、そのパン屋さんを調べました。
すると、このお店にはこだわりがあって、防腐剤、保存料、着色料、香料、光沢剤不使用で製造していることが分かりました。
価格は高いけれど、“健康志向のお客様”でにぎわっています。
一方、1週間経ってもカビが生えない、添加物を使っている安くて美味しいパン屋さんにも行列ができています。
こちらのパン屋さんの顧客ターゲットは、“安くて美味しいパンが欲しい人”。
防腐剤、保存料、化学調味料などの添加物を使っているので、後味が悪く、味が濃く感じられます。
でも、繁盛しています。
きっと、添加物なんて気にしないお客様なのでしょう。
添加物によって健康を害するか否か、あまり気にならない人たちかもしれません。
私も気になりませんが、好んでは食べません。
今は、このような情報がネットに書かれてしまいます。
顧客の求める価値は「情報」です。
書かれていることが本当なのか?
ウソなのか?
ライバル店の嫌がらせなのか?
そんなことは分かりません。
ネットには「情報」が溢れています。
これからも、価値のない情報が溢れていきます。
だから、誠実に仕事している企業は、“正しい情報発信”に努めるのです。
顧客の求める二つ目の価値。それは、「判断基準」です。
“より善きパートナーを見極める判断基準”です。
先ほどの前者のパン屋さんは、お客様の健康を大切にする経営をしています。
だから、メロンパンにも香料を使いません。
それは、すごくコストが高くなるものらしいです。
顧客が求めている「判断基準」は、やはり会社側が必死になる「集客」とは無関係です。
顧客が求めているのは、“自分に合ったパートナー探し”。
そのための正しい情報、そして判断基準を探しているのです。
それは、会社の「集客」に、とても重要なのではないでしょうか。
一昔前に通じたことが通じない時代
現在は、一昔前は通じたことが通じなくなっています。
たとえば、チラシのポスティング。
そのチラシが低価格戦略なら、顧客は低価格を求めてやってきます。
会社側の「集客」と、顧客側の「パートナー探し」が合致し、契約となり、めでたしめでたしです。
ところが、ポスティングされたチラシを見た顧客は、「安いだけの会社なら、ネットでも探すか?」となる可能性が大です。
そして、もっと安売りしている会社を見つけます。
すると、その顧客は、「あのチラシの会社って、安くないんだ!」と思うかもしれません。
会社側の「集客」と、顧客側の「パートナー探し」が不一致となり、契約にはなりません。
そう考えると、やっぱり価格勝負は分が悪い。
価格勝負だけじゃない。品ぞろえで勝負も分が悪い。
今はネットで容易に調べられる。
だから、目に見える商品・サービスで勝負するのは、時間とともに上手くいかなくなるのです。
目に見えない価値提供なら、
顧客の「パートナー探し」と企業側の「集客」が合致しやすい。
ある日の午後。妻がチョコレートづくりで忙しかったので、実家のお店の留守番をしていました。
すると、お客様が来店されました。
私:「どちらからいらしたんですか?」
お客様:「船橋から電車で、取手駅からバスで…」
私:「えぇ!遠かったでしょう」
お客様:「よく来るんです。すぐ近くに、有名なユーチューバーさんがいて…」
私:「そんなすごい方が近くにいるんですか?」
お客様:「有名ですよ!その方が、ここの珈琲が美味しいよって教えてくれたのよ…」
誤解しないでください。
“目に見えない価値”とは、お客様から紹介を得ることではありません。
顧客が求める価値は、「正しい情報」と「判断基準」です。
近所のユーチューバーさんは、“地元のお客様を喜ばせる仕事をしている”妻のお店のお客様です。
彼らは、お客様を喜ばせてくれる会社、パートナーを探しているのです。
“本当”を探している顧客が求める「パートナー探し」。
今はホームページで評判が確認できます。
それはもちろん重要です。
だけど、パートナー探しの判断基準は、その会社が“天を見て仕事をしているのかどうか”です。
それを顧客は確認しているのです。
美しい会社からの相談。
数か月前、ある工務店の社長さんから、次のような相談をされました。
「同級生から住まいの建て替えを相談されているんだけれど、うまくいきそうもないから断ろうと思うんだけれど、どう思う?」
なんて言おうか痺れました。
だって、都内の家の建て替えで、6~7千万円はします。
私は、ただただ話を聞くことで精一杯でした。
その後、そのお話はどうなったのか。
彼は、同級生の家づくりを断りました。
数千万円単位の利益より、会社の使命を優先しました。
これが、天を見て仕事をしている人の特徴です。
会社が「理念」や「使命」を大切にしているかどうか。
それは、ネット社会でも確認ができます。
一方で、確認をしてもらえない会社は苦戦するでしょう。
お客様は、氾濫する情報に価値を見出せないでいます。
“見える物”レベルでの比較対象に苦労しています。
だから、“見えないもの”での勝負をおすすめしています。
会社。
スタッフ。
理念。
使命。
生き方。
それに共鳴してくれる顧客がいる。
誰でも知ることができるネット上の情報に、価値を見出せない社会。
それが当たり前の時代、誠実な会社以外は残らないのではないでしょうか。
そして、そういう戦略をつくる方法は一つ。
それは、お客様を観照すること。
それ以外、方法はないのです。

