良いものは高くても売れる?

良いものは高くても売れる?

そして、良いものが安ければもっと売れる。
更に、良い物でも高すぎれば売れない。

先日、久しぶりに辣腕経営者達と飲む機会があった。

夕方、表参道のグッチの前で待ち合わせをして、
5人の経営者が北青山のオシャレなイタリアンレストランに集まった。


いつもは時間にルーズな私が,
今日は珍しく待ち合わせに一番乗りした。
そして、十数分の間に厳つい男達が集まってきた。

しかし、表参道の待ち合わせなら、やっぱり女性が似合う。
表参道を通り過ぎる誰もが、我々5人を不思議に感じていただろう。
誰もが「青山」が似合わない。(自分たちが一番ぎこちなく感じていたわけだが・・・)


お目当ての店について、
スパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン。
美味しいイタリア料理を、美味しい酒と一緒に楽しむ。それも、男だけ!5人。
不思議な時間だけが過ぎていく感じだ。


そんな時、5人の中でも高級商品を取り扱っている社長が
「やっぱり、良いものは高い!」と力強く言った。
我々、他の4人も同感だった。

しかし次の一言に私は同感できなかった。「良いものは高くても売れる!」

「良いものって!何?」

良いものって何だろう。
お客は高い価格に満足するのか?
確かに、高いと言うだけで反応する客はいる。


しかし、それは稀・・・・・
お客は良いものならば、いくらでもお金を出すのか?
それは違うのではないか?

このイタリアンの店で言えば、「味」にお金を払っているのか?
それが間違っている事は誰にでも分かる。
我々は、「味」、「サービス」、「雰囲気」、「立地」、「清潔」・・・・・。
こんなところにお金を払っている?
しかし、この中には、大切なキーワードが一つ欠けている。
それは、我々を満足させるレストラン側が提供する価値を「安いね」と言わせる『価格』だ。

ご存じの通り価格は、
顧客にとって購買を決定づける大切な判断基準である。
価格を間違えると、多くの顧客は購買しない。
顧客を逃がす事になる。

こんな事は、これまでに何度も歴史が我々に教えてくれた事だ。
だから、『価格』を決定する事は難しい。


『価格』って何だろう?

田舎のコンビニエンスストアを考えてみた。
コンビニで売っている商品の多くは定価販売である。
同じ商品ならスーパーや薬局で買った方が、安く買える事は誰もが知っている。

しかし、コンビニエンスストアでは商品が定価で売れていくのである。
もちろん、売れ残ったDVD等は大幅値引きで売っているが、
それだってインターネットで買った方が絶対にやすい。


それでは、なぜ、コンビニでは商品を定価で売っているのか?
その理由は、我々は商品を買っているのではなく、『利便性』を買っているからだ。
24時間。365日。いつでも買えるという利便性をコンビニは売っているのだ。


コンビニの利便性の追求はそれだけに留まらない。
最近の田舎のコンビニの駐車場は、
大型トラックが充分に駐車できるスペースを確保している。
駐車場のスペースが店舗の10倍はあると思われるコンビニだって珍しくない。


なぜか?
彼らは、そこで食事をするのである。
昼食時に駐車場に留まっているのは、大型トラックばかりではない。
営業車。
工事車両で駐車場が占領されている。

トイレも自由に借りる事が出来るコンビニは、
今後、飲食店等の最大のライバルの一つになるのかも知れない。

コンビニは、一般の商品は定価販売。
安くはない。
しかし、圧倒的に人は集まる。

お弁当だって安くはない。昼食だって1,000円近く掛かるだろ。
しかし、1,000円あれば、お弁当に飲み物、更にデザートまで食べられる。

広く確保された駐車場の車内。
安心できる車内空間でゆっくり、自由に食べられる。
決して安い価格では無いかも知れない。
しかし、車内で昼食が取れる利便性は魅力的だ。

コンビニは弁当という「もの」を売っているのではない。
安心したスペースで、ゆっくり取れる昼食を販売している。
「良いものは高くても売れる!」という発想ではない。
サービスを売っているのだ。

利便性が顧客にとって価値あるのである。
それが、顧客にとって魅力ある『価格』で提供されているのである。


ものがあふれている時代。
顧客は「もの」を求めているのではない。
「もの」を求めているのならば、
コンビニより安く商品を売っていた町のスーパー、
商店街は今でも元気なはずである。


お客は「もの」よりも、お客にとって価値あるものを買っている。
そして、その大きなキーワードが「利便性」である。


高級商材を販売している社長は「良いものは高くても売れる!」と言った。
しかし、売れるのは「もの」ではない。
お客にとって価値あるものが高くても売れるのだ。

私たちはイタリアンの食事が終わり、席を移してデザートを口にほおばっていた。
食後酒であるグラッパを仲間達は飲んでいた。

そして、たわいもない話に顔をほころばせていた。
そこには、経営の話はなく。
無邪気な男の笑顔が揃っていた。この無邪気な笑顔で食事が終わる。

イタリアンレストランが、我々、提供してくれた5人の男達が求めた価値である。

投稿者: マーケティング情報センター 日時: 2008年03月18日 10:03
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コメント (1)

高谷修:

素晴らしい記事です、感銘を受けました。
手前は、日々、悩みの多い営業マンですが、あなた様の
記事を参考にしながら活動していきたいと考えております。
ありがとうございました。

投稿者: 高谷修 | 日時:2009年08月20日 23:28

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